ナッキー☆ヒネモスランド

                          byチィさん

わたくしの侍女は、ヒネモス・ヒネスモと言う。
転がしがいのある娘で、下に妹がひとりいる。
その妹はモスヒネ・モネヒスと言って、わたくしの妹、ナディアの侍女をして
いる。
姉妹で姉妹に仕えてくれるのはけっこうなのだが、なんともこんがらがった名
前の姉妹だから、舌が回らなくなるたびにわたくしとナディアは
「きィィィィっっ」とこめかみに青筋立てて、首飾りや腕飾りをブチ切ったり
させられる。
なんとも迷惑な姉妹である。

最近、バビロニア国内には波紋が広がっていた。
ヒッタイトのムルシリ一世が、バビロニア討伐の兵を挙げるとの噂が広まって
いるのだ。
「ねえヒネモス、戦争になんのかしらねぇ?」
ベッドにダイビングしながら、わたくしはぽつりと呟いてみた。
ヒネモスは、このあいだわたくしが引きちぎったシーツを繕っていた。呑気な
もんだ。
「戦争ですか?そういえば、妹君もそうお尋ねになられたと、妹が。」
「なんですって?もういちどおっしゃい。」
「ですから、妹が妹君も同じことをおっしゃっていたと」
同じような名前の姉妹が二組いることが、こんなにも紛らわしいことなのだと
学ばせてくれたことには感謝しよう。
「・・・あんたその名前どうにかなんないの?」
半ばキレ気味で、質問を口に含ませる。
「はあ。ですが、ババさまがたから引き継いだ名前ですので、こればかりはど
うしようも。」
「なによその、ババさまって。」
「わたくしたちの母の母と、その妹でございます。」
「おまえ、わたくしを苛立たせる以外に特技はないのねッ?祖母とおっしゃ
い!」
「はあ、そうとも言いますね。しかし幼い頃からババさまババさまと言ってき
ましたので。」
「じゃあ祖父はジジさまなわけ?」
「いえ、祖父は厳しい人でしたので、じいちゃま、と。」
―――そーかい。
「そうだ、特技は姫様のおかげで縫い物ですね。本当に、上達いたしまし
て。」
「六行も前から質問拾ってくるんじゃないわよッ!」
「それは、申し訳ないことを。」
もういい、寝る。わたくしはベッドに寝転がり、ガバッと毛布を被った。
「姫様、くすみとりクリームはお塗りにならないのですか?」
―――――この侍女、ほんッと最強だわ。

                               おっしまいッ!

     

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