「ととまゆ&ととしめ」  

                   byマリリンさん

「ととまゆー」ピア皇子の呼ぶ声がする。
今日は疲れてるんだ。釣り竿もタモ網も付き合うのはごめんだな。
おれは、聞こえないふりをすることにした。
ところが・・・・・・「ととしめだよー」と言う声と共に、ポチャンとかわいい水しぶきがあがったではないか。
餌が投げ込まれたわけではない。そんな音ではなかった。
「ととしめ」?
いったいなんだ?。音がしたところに駆けつける(泳ぎ寄る?)とかわいい魚がいた。
!か、かわいい。
見上げると皇妃と皇太子もいるではないか。
「一人(一匹)じゃ可哀想だからね。かあ様にお願いしたんだよ。”とと姫”って言うんだ」
と皇太子。おおっ そうだったのか。
もう一度視線を元へ戻すと、ちょっと恥ずかしげに身をすくめる魚がいた。
かわいい。食べてしまいたいぐらいだ。おれは有頂天になった。


ここは、王宮中庭の池。
きっと、今まで過ごしてきたところとは全然違う環境だろう。
おれは、付きっきりでいろいろなことを教えてやることにした。
とと姫がだんだんおれに好意を寄せてきてくれるのがわかる。
とても、嬉しい。

付きっきりで世話を焼くおれの様子を見てにやにやしているのは、皇帝陛下である。
いかにも、鼻の下を伸ばしていると言わんばかり。
皇帝の皇妃に対する態度だって、一緒じゃないか。暇さえあれば皇妃を抱き寄せているくせに・・・・
おれを見て にやついているとは、自分で自分のことを笑っているようなものだぞ。
そうだ。いつも見せつけられてきたが今日は見せつけてやる。

そう思ったおれは、とと姫にキスすることにした。
それが、まさかあんなことになるなんて・・・・・

おれは、体格の差をなにも考えていなかったのだ。
とと姫にキスするつもりが、吸い込んでしまう形になった。
飲み込みこそしなかったが、おれの口にすっぽりはまり込んだとと姫。
もがく、もがく。おれは、パニクった。
食べてしまいたいほどかわいいとは思っていたが、食べてしまうつもりはない。
ひゃあ、どうしたらいいんだ。池の中を猛スピードで泳ぎまくる。

そのおれに救いの手をさしのべてくれたのは、皇帝だった。
たもでおれをすくい上げ(さぞや重たかったろう)とと姫をおれの口から助け出した。
とと姫はさすがにぐったりしていたが、命に別状はなかった。

あれから,とと姫は警戒しておれのそばに寄ってこない。
しかし、決して、おれのことが嫌いになったわけではなさそうなのだけが救いだ。
とと姫が成長するまで、キスは我慢することにしよう。ため息をつく。

ふと見上げると皇帝が皇妃といちゃついている。
く、悔しい。あれは絶対、おれに見せつけているんだ。
その証拠に、皇帝のおれを見る瞳がいたずらっぽく輝いている。
しかし、とと姫が今生きているのは、皇帝のおかげだ。

心の中で歯ぎしりをしながら、おれは皇帝と皇妃をみつめた。
ついと視線をそらし、心を押し隠しながら悠然と泳いでみせる。
とと姫がおれの後ろから控えめについてくる。
今はそれだけでよしとしよう。

               おわり


     

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