幸せな日常
by yukiさん
朝目が覚めるとハディの声が聞こえてくる。
「ユーリさま、目が覚められましたか?湯殿の用意ができてますから」
「あれ、陛下は?」
「陛下は先ほど執務室の方へ」
そっか、今日は忙しいんだ。カイルは普段あたしが目覚めるまで側にいてくれる。先に目が覚めても
隣にいてくれる。ただ、政務がたてこんでいる時は先に起きて仕事を始める。
「今日は何をお召しになりますか?先日陛下がお選びになったこちらのお召し物はいかがですか?」
「そのお衣装にあわせたアクセサリーもありますわ」
ハディと双子達が今日も朝から張り切っている。
今日のオススメは藍の染料で鮮やかに染められた質素なドレスだった。ひらひらじゃないやつ。
最近はひらひらじゃないのも結構選んでくれる。あたしがあんまり着ないから諦めはじめたみたい。
「ささ、湯殿に」
服を落として湯につかる。
「では、ご用意を整えてまいります」
朝風呂の時はハディ達も磨き上げようとしない。あたしが恥ずかしがるから。
だってカイルは毎日どこかに痕をつける。必ずつけたがる。昨夜だって
「ユーリ、ココのが薄くなってきたな。つけなおしておいてあげよう」
なんて言いながら前のよりもきつく痕をつけていた。
あたしもカイルの肌につけてやりたいけど、カイルのカラダについた痕をカイルの従者に見られるのを考えると恥ずかしくってできっこない。
「ユーリ、ひとりじゃ洗いにくいだろう。流してあげるよ」
「え!!?」
びっくりして振り返るとそこにはカイルの姿。
「い、今はお仕事中じゃ…?」
「ああ、それならもう終わったよ。イルのいじわるだな。
でも、おまえとこんな時間を持てるんだから感謝すべきかな?」
そんなことを言いながら衣装を落とすと湯につかりに来る。
「ほら、ユーリ。昨夜の汗を流すんだろ?おまえのカラダのことは私がよく分かってるんだ、私にまかせたらいい」
「そんな…!自分で出来るよ!!」
自分でも真っ赤になっているのが分かる。単にのぼせた始めたからなのか、恥ずかしいからなのか。
それともこれからの時間を思ってのことなのか。自分でもよく分からない。
「この黒髪はうなじの白さをいっそう際立たせるな。それにおまえの象牙色の肌が上気した様というのは罪作り以外のなにものでもないよ」
普段よりも艶っぽい声で耳元に囁きながらカラダを流すというよりは昨夜の情熱を思い出させる様に湯をかけてくる。
「あんまり私を誘ってはいけないよ。そんな目で見つめられたら我慢なんて出来ない相談だ」
手だけじゃなくて唇も肌に彷徨わす。
あたしはだんだん何も分からなくなってくる。
何も考えられなくなってくる。
「ん…、カイル」
カイルの背にしがみつく。カイルの頭を掻き抱く。
カイルの腕にも力がこもる。
「すべてを私にまかせればいい。私におまえの全てを…!」
気がついたら湯殿の寝椅子に寝かされていた。カイルに膝枕してもらって。
「気がついたか?のぼせそうならそう言ってくれないと心配するだろう?」
あたしがのぼせた原因は涼しい顔してワインを飲んでいた。
「誰のせいだと思ってるの?」
顔が赤いのを自覚しながら恨めしげに言ってみた。
「だから私が看病してやるんだよ。湯あたりには涼しくしないとな」
今度はあたしを抱き上げて寝台に直行。
「ほら、こうして風通しを良くして安静に」
服は着せてくれずに上掛けを掛けると自分も羽織っていたものを落として寝台に入ってくる。
「カイル!?今日のお仕事は!?」
「おまえの湯あたりが治るまでの時間くらい待ってくれるだろう。それに火急の案件が出てくれば呼びに来るさ」
そう言うなり寝息をたて始めてしまった。
疲れてるみたいだったから大人しくカイルの胸と腕にカラダを預けてあたしも目を閉じた。
ゆるやかな風が吹いている。シーツとカイルの肌がさらさらしてて気持ちいい。
いい夢がみれそう。
END
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