マリリンさんの奥座敷にて8000番のキリ番げっとのリクエストは「嫉妬にさいなまれるユーリ」彼女の場合はあんまり表にでませんからね。


デンジャラス・マインド



 カイルが、浮気してる。
 何を馬鹿な、とみんなは笑い飛ばすだろう。でも、あたしにはピンときた。
 女のカンってやつだ。
 カイルは毎晩あたしと過ごす。今も、あたしの横で眠っている。
 あたしは巻きついた腕を外す。カイルは寝言なのか、もごもご言った。
 そうよ、問題は、これ。
 いつまでも新婚ではいられないのは分かっているけど、最近のこれってあんまりじゃない?
 あたしはカイルの顔を見下ろす。
「カイル、あたしの他に・・女がいるの?」
 あ、ちょっと生々しい発言だったわね。
「・・・う・・ん・・・」
 聞いた!?今、確かに認めたわ!!
 あたしはむかむかしながらカイルの鼻をつまんだ。かわいさあまって憎さ百倍とはこのことよ。
「ぐぐぐ・・」
 ふふふ、苦しんでいる。
「ぷはあっ!!」
 あたしが手を離すと同時に、カイルは目覚めた。肩で息をしている。
「カイル?」
「・・・ああ、ユーリか・・私はうなされていたようだな」
 まあっ?夢を見ていたの、のんきな!
 腹を立てているあたしの身体に腕をまわすと引き寄せる。
「もう一眠りするか・・おまえがいるとよく眠れる」
 そう言って、まぶたを閉じる。
 お〜〜〜いっ!!
「ちょ、ちょっとカイル、なにか忘れてない?」
 言うと、しぶしぶみたいに、あたしのおでこに口づけた。
「おやすみ、ユーリ」
 ・・・おやすみって、それだけ?
 あたしはしみじみと悲しくなった。もう、カイルはあたしなんて興味がないんだ。
 だって、最近・・・だよ?
 以前は一晩にそれこそあたしがやめってて頼むまで・・・だったのに。
 浮気してるんだ。
 一生あたしだけを愛してくれるって言ったくせに。
 最近はキスだってあんまりしてくれないし・・以前は人目もはばからず抱き上げてくれたのに、もう何年も持ち上げてはくれない。
 そういえば、昼間あたしが話しかけてもぼうっとしている。
 あたしは、唇を噛んだ。
 こんなのって、ないよ。
 あたしはカイルの過去は一切追求しなかった。それは、カイルがあたしだけを選んでくれたと思っていたから。
 たまらず涙がこぼれた。
 腕の中であたしが泣いているのに、カイルは目覚めない。
 あたしは、たまらなく寂しかった。



「どうされたのですか?陛下」
 声をかけられる。いぶかしんだあたしの顔をさして、あたしの髪の色にカイルそっくりの顔が言う。
「目が、真っ赤ですよ?」
 だって、一晩中泣いていたんだもの。
「おはよう」
 そんなあたしに気がつかないみたいに、カイルの声が後からした。
「おお、本日は腰の調子はどうですか?」
「まあまあかな」
 カイルは言うと椅子にどっかり腰を下ろす。とたんにカーテンの陰にいた子供達が飛び出して来る。
「じいちゃま〜」
 やっぱりカイルと同じ顔の子供達。
「ホントに、あなたの子供の頃にそっくりね、デイル」
 あたしも一人抱き上げながら笑いかけると、デイルは・・困った顔をした。
「あの・・お祖母さま、私は父上ではなくあなたのひ孫のジュエルです」
 あ、あらそうだったかしら?イヤだわね、間違えちゃった。
「あのね〜じいちゃま!!」
 カイルの膝によじ登りながら、孫・・ではなく曾曾孫がしきりになにか訴えている。
「こらっ、ひいひいお祖父に乱暴なことをするんじゃない!!」
 ジュエルが叱責する。
「まあまあ、ジュエルいいじゃないか、子供は元気が一番だ」
 カイルは最近エジプト人の医者に抜けた歯を差し歯にさせた。
 20歳は若返った気がする。
「ユーリは子供好きだからな、ワシがもう少し若ければ」
「ひいお祖父は、お若いですよ」
 カイルはあたしを指した。
「これのように、いつまでも歳を取らないわけにはゆくまいて。最近は夜の方もさっぱり」
 ああっ!!嘘ばっかり!!あたしに興味が無くなったって正直に言ったら?
「まだまだお若いですよ」
「いやいや」



 もうすぐカイルの歳は三桁になる。
 あたし達も80年近い結婚生活を送ってきた。
 なのに・・・今になってカイルが浮気をしている。
 あたしはそう信じてる。


                   おわり  

      

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