これは、ユーリがもしも還ってしまっていたら、というお話です。

 やくそく

                                 byマリリンさん


「ユーリ」
 
泉の前でカイルがつぶやく。

 壊されて、以前の面影はどこにもない泉。
 本当なら修復を命じなくてはいけないのだがユーリが還っていったときのままで、もうしばらくおいておきたい。
 わかっている。
 未練だと
 ・・ ユーリを国に還す。それは、私が決めたこと。
 だからこそ 代わりの神官も用意した。
 愛していた、自分のすべてで。
 愛に代わりなどない。
 この愛を失ったら、この先ずっと孤独の闇のなかを歩いて行くだけ。
 それでも、お前の哀しい瞳をみることに比べれば・・・・・・。

 ユーリ、自分の国で幸せに暮らしているのだろうな。
 おまえが幸せに暮らしていけるのなら、ここでの出来事など夢だと思って忘れてしまってかまわない。
 わたしのことも、二度と思い出さなくてもかまわない。

 二度と会えなくても、わたしはお前のことを忘れない。
 お前だけを想って生きていきたい。

 最近元老院が
「タワナアンナが不在では国事決定に支障がでます。お世継ぎもいなくては困ります。」
と早く正妃を迎えるようにと迫ってくる。
 正妃の候補者リストが積み上げられ毎日その話だけ。
 陛下の好みと、黒髪 黒い瞳の女性ばかり選んでくるのには、苦笑するしかない。
 たまたまお前が、黒髪・黒い瞳だっただけなのに・・・

 お前だけを想って生きていきたい。

 でも、それはかなわぬ夢のようだ。
 ヒッタイト帝国の皇帝、その地位は私にどれほどの要求をしてくるのだろう。
 こんな地位などほしくない。投げ捨ててしまいたい。

 そうしたらお前だけ想って生きていけるのだろうに。

 お前の最後の言葉は、「あなたの手にオリエントの覇権を残していく」
 そして、その約束通りアルザワをおさめて還っていった。

 今、私が皇帝の地位を捨てるのは、お前がしていったことを否定すること。
 それだけは、したくない

 ユーリ、おまえのことを忘れるわけではない。
 忘れられるはずもない。


 だが、正妃を迎えわたしにできる精一杯のことをして、この国を守っていこう。



おわり
    
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