・・・これは、表座敷(?)の「マホウノコトバ」の続きです。


        イエナイコトバ

 いつだって、カイルはあたしに惜しみなく言葉をくれる。
「綺麗だよ」
 指が肌を走る。
「おまえが、愛しい」
 腰を強く引き寄せられる。
 いくつもの言葉が夜空の星のようにきらめいて、あたしの身体にちりばめられていく。 同じだけの言葉を返したいのに。
「あ・・・」
 ただ、吐息だけがこぼれて、切なさは唇からすべり落ちていく。
「愛しているよ」
 アタシモアイシテル。
 強く吸われた肌は歓喜の色を残すのに、言葉だけがあたしを裏切る。
 燃え上がる身体が、狂喜して彼を貪るのに、開かれた口からは激しい息しか漏れない。 胸を焦がすこの想いを、どうすれば伝えられるの?
「ユーリ・・離さない」
 ハナサナイデ・・・ハナシタクナイ
 汗ばんだ肌の奥からもさらに奪おうとするから。ただ、四肢を絡めてカイルの身体を浸しつくす。たった一つに溶け合えば、この想いも伝わるだろうか?
「・・カイ・・ル・・・」
 愛しい名前を口にするのさえ、苦痛なんて。膨れ上がった想いが、いまにも肺を破りそうで。
 しがみつく。
 爪を立て、悲鳴に似た息づかいで。
 マダ、ツタエテナイヨ。



 閉じられた瞼をなぞり、乱れかかる前髪に指を絡める。整った顔を見上げながら、身体の中で急速に収束した炎の残映を見つめる。
「ねえ、あたしが、愛してるってこと知ってる?」
 秘かな、ささやき。
 眠っていたはずの腕に力がこもる。
「知っているよ」
 目を閉じたまま、夢見るように。
「おまえはいつも、その身体で叫んでいる」

                        おわり 
     

     

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