yukiさんの奥にて12000番げっとのリクエストは『おねだりユーリに嬉しく思っても心底困ってしまっているカイル(カイル視点)』・・・あらあら。


ばいばいサマー


 もうすぐ、夏も終わる。見上げれば雲の流れもはやくなり、朝夕には冷え込むようになった。
 夜、窓の外から虫の声が聞こえたりする。
 夏も良いが、秋はもっと良い。
 ユーリが無意識のうちに身体をすり寄せてくるし、夜の間ぴったりと密着していても文句を言わない。
 だから、私は毎日上機嫌だ。

「カイル、あたし・・痕ついてない?」
 いつものように、二人だけの時を過ごしていると、ユーリがふと言った。
「ん?痕って、なんだ?」
 そんなもの、全身くまなくついているぞ。私は滑らかな肌に頬をすりつけながら、応える。
「・・・日焼けの痕。なんだかいっぱい焼いちゃったから」
 確かに、夏の間ユーリはその肌を躊躇なく太陽の下にさらしていた。
 日焼けをしないのは高位の者の特権だというのに、あろう事か日光浴までしていたのだ。
「なんだ、気にしているのか?」
 透けるように色白の肌も好きだが、健康的な小麦色の肌も好きだ・・ユーリなら。
 私は、ユーリの手首を掴むと、そっと胸の上に持っていく。
 ・・・確かに・・焼けている。
 ふくらんだ胸元は象牙色をして薄明かりの中、光を帯びているのに、細い手首は飴色の光沢を放っていた。
「・・・ねえ、カイル?」
「・・・少し、残っているな」
 まあ、そんなことは気にしちゃいないが。何色をしていようがユーリの身体は、ユーリの身体だ。
 柔らかくて、手触りが良くて、暖かくて、私に触れられるのを好む。
「背中、とかは・・どう?」
 私はしぶしぶ、胸を包んでいた手のひらをはずして、ユーリの身体を裏返した。
 華奢な首筋からなだらかに腰まで続くラインを、丹念に撫でる。
「・・・残っているな」
 水着とやらの痕が。察するに、私の目を盗んで泳いでいたらしい。
 まったく、いつ誰の目に触れるやも知れないのに無防備もいいところだ。
 明かりを近づけて、観察する。
 背中には、複雑に痕が残っている。
 この、肩口から垂直に落ちる白い線は水着の肩紐として、このクロスしているのは・・なんだ?
 指でたどると、ユーリがくすぐったそうに身じろぎをした。
「やだ、カイルなにしてるの?」
 うむむ・・もしかして、これは・・?
「ユーリ・・・水着は・・私に見せたモノだけか?」
 びくり、と背中が揺れた。
 やはり。
「おまえ、あれとは違うデザインのもハディに作らせたのだな?」
 おそらく、もっと大胆なデザインのものを。
「・・なに言ってるの、カイル」
「証拠は、ここにある」
 そっちの痕の方が・・身体を包む部分が少ない。
「こんなあられもない格好で・・」
 たとえ相手が三姉妹だとしても、私以外の者の目に触れたのだから、穏やかではない。
「だ、だってね、そっちもカイルに見せようと思ったけど、忙しかったでしょ?」
「昼間は忙しかったがな、夜には時間があったはずだぞ」
 どうせ私が反対すると思って、最初から見せる気などなかったんだろう。
「じゃあ、今見せる!!」
 言うとユーリは私の腕から、すりぬけようとした。
 もちろん、そうはさせない。
「カイル?」
「今夜は・・・もっと、刺激的なモノを・・見せてもらおうか」

         

 虫の声が、聞こえる。窓から流れ込む風は思いのほか涼しくて、私はユーリの身体にしっかりと腕をまわす。
 ちいさなため息と共に、ユーリが目を開く。
「カイル?」
「ほら・・虫の声だ」
 掛布を引き上げ、身体に巻き付けながら唇をそっと触れ合わせる。
「・・・すっかり、秋だね」
 どこか、ぼうっとした声でユーリが言った。
「ねえ、カイル。もしかしたら背中の皮剥けてくるかもしれない」
「うん?」
「そうしたらね」
 ユーリの唇が私の耳朶に寄せられる。
「恥ずかしいから、見ないでね」
 そのまま、私の首筋に吐息がかかる。
「分かった、その時は明かりを落とそう」
 ユーリの黒髪の匂いを吸い込みながら私は応える。
「・・・だめだよ、触れば分かるじゃない」
 私は微笑し、なめらかな背中を手のひらで撫でた。
「私に触れるなと言うのか?」
 また、無茶なことを言い出すものだ。たとえ一晩でも、この感触を楽しめない夜に耐えられるとでも思うのだろうか?
「うん・・・お願い」
 困った寵姫だ。お願いされると、私が断れないと知ってのことか。
「おねだりには・・見返りが必要だな」
 私の言葉に、ユーリは黙り、やがてゆっくりと腕が首にからみついてくる。
「約束、よ?」
「ああ」
 触れているだけでは変化の感じられない肌に、手のひらを滑らせる。
 象牙の肌が、荒れるなんて事は無いだろうとは思うが、万一のために、今宵はもう少し楽しんでおこう。


                   おわり

      

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