ある冬の日

                by yukiさん

 冬の朝はきらきらしてる。
 いろんなところで氷の粒が乱反射してる。
「朝は冷えるな。風邪をひくぞ」
 カイルの声に振り向くと毛布の中に包み込まれた。
「おはようユーリ」
「おはようカイル」
 ふたりで毛布にくるまれて朝のあいさつ。
「こんなにも体を冷やしてしまって」
「だって、外があんまりキレイだったから」
「雪でも降ったのか?」
「ううん。空気が澄んでて、なんだかきらきらしてたから」
 毛布にくるまれながら窓際に移動。
 ハットゥサの街が冬の朝日にきらきら乱反射してる。
「美しいな」
「でしょ?」
「もっとも、それもおまえが側にいればこその話だがな」
 後ろから抱き込んできてたカイルの唇がうなじのあたりに下りてくる。
「くすぐったいよ?」
「では、くすぐったくないのがいい?」
「…くすぐったいのでいい」
「おりこうだ」
 カイルの声に忍び笑いが紛れ込む。
 今日も朝から上機嫌だね。
「今日は天気もいいようだし、久しぶりに遠乗りでもするか?」
「え?いいの!?」 
「わたしが午前中の政務を終えるのを大人しく待っていられたらな」
「………待ってる」
 昨日脱走したの許してくれてるの?

 久しぶりにアスランを駆って街のはずれの高台に来た。
 ここは思い出の場所。
 あの時たわわに実らせていた木はすっかり葉を落としてしまっていた。
「なつかしいな…」
 幹にそっと手を押し当ててカイルが呟く。
「ホントに…」
 あたしはカイルの体に腕をまわす。
 カイルの腕があたしを抱き寄せ、唇が下りてくる。
 そっとふれあう優しいキス。
 冬の冷たい空気の中でカイルの唇はあたたかい。
「ユーリ、わたしから離れるな」
「カイル」
「この地にある限り命を懸けておまえを守ろう。だからわたしから離れるな」
 あなたはあの時もそう言ってくれたよね。
「あたし、もうカイルから離れることなんてないよ。
 だってあたし自身が決めたんだもん。カイルと共に生きるって」
 もう一度キスをする。
 二度と離れることは無いという誓いのキスを。
 あの時と同じように。

 王宮に戻るのにそれぞれの騎馬に乗る。
 ハットゥサの街へ向けて馬首を並べる。
 街は陽の光に包まれていた。
 朝は宝石を散りばめたようにきらきらと輝いていた街は、陽の光にかぶっていた。

 王宮に帰るとカイルとふたり、湯殿に追いやられた。
 カイルが政務で忙しい日以外は何故か半ばムリやり一緒にお風呂に追い立てられる。
「おいでユーリ」
 いつものようにカイルが手招きする。
 大きな湯船の中を泳ぎ寄ると、その腕の中に捕まえられてしまう。
「アスランに乗るのも久しぶりだったから疲れただろう?」
 そう言ってマッサージしてくれるのは嬉しいけど何だか手つきがいやらしくない?
「とくにこのあたりが…」
 腰のあたりにあったカイルの手が下りてきて、お尻をつかんできた!
「ちょっと、カイル!何やってんの!?」
「何って?」
 すっかりとぼけた顔をして〜。
「カイルの右手、どこにあるの!?」
「どこって、おまえの小さな尻だよ。馬に乗ると一番使うからな」
「だったらそのいやらしい手つきでするのはヤメて」
「……、ムリだな」
 ざぶんと音をたてて立ち上がるとあたしを軽々と抱き上げて湯からでてしまった。
「まだあったまってないよ」
「湯浴みなんかよりもっとあたためてやるよ」

 ぐったりと力の抜けてしまった体をカイルの腕の中に横たえると額にそっと口づけられる。
「なんだ、もうぐったりだな」
 笑いながら言うけどね、カイルの体力につきあってたら夜が明けるどころじゃすまないよ。
 カイルの肩口に頭をあずけながらそんなことを思っていたらクイと顎を上げさせられた。
「カイル?」
 カイルの顔が至近距離にある。
「愛してるよ、ユーリ」
「カイル。あたしも、愛してる」
 どちらからともなく唇を寄せ合う。
 背にまわされたカイルの腕に力がこもる。
 ついさっきまで熱を冷まそうとしていたカラダが疼き始める。
「確か明日は急ぎの案件は無かったな…」
 遠くなり始めた意識の片隅でそんな声を聞いた。

                    END

       

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