女の味方


「ね〜ね〜カイル!素敵でしょう!?」
 ユーリが声を弾ませて、大胆にもガウンの前を開いて見せた。
 私は、思わずつばを飲み込み、それから急に気分が萎えた。
「なんだ、ユーリ、その・・」
「赤いパンツよ!これを穿くと運が良くなるんだって!」
 運・・・またなにか通信販売か?
「それにね、今申し込むとやっぱり運勢が上昇する梵字入り水晶ブレスレットがついてくるの!」
 言うとユーリは左手首につけたブレスレットをきらきらさせた。
「ユーリ・・・」
 私はめまいを感じながら、言った。
「もっと上等な宝石もいくらでもあるだろう、そんなブレスレットは・・」
「あら、効果あるのよ、これ」
 ユーリは得意げに胸を張った。
「だって、今日木登りをしていたら手が滑って落ちそうになったんだけど、上手い具合に途中の枝に引っかかったのよ?」
 ・・・木登りだと!?
「これも、きっとブレスレットと赤パンのおかげね」
 私はユーリの肩をぐわしと掴んだ。
「ちょっと待て。おまえは私に内緒で木登りなんてしていたのか?」
 ユーリが首を竦める。
「うん・・ちょっとだけ・・・でも、落ちなかったから」
「落ちそうになったんだろう?」
 ああ、もしユーリが落ちていたら・・考えると気がおかしくなりそうだ。
「・・でも、大丈夫だったし」
 私は真剣な顔でユーリを見た。
「今回は偶然だ。ブレスレットや赤パンの効果はどうだか知らないが、おまえが木に登ろうという気を起こさなければ、落ちることもないんだから」
 ごめなさい、と小声でユーリが答える。
 どうせすぐにまた危ないことをやらかすつもりなんだろうが、うつむいた表情に私は弱い。
「分かればいいんだよ」
 あごをひいて上目遣いに私を見上げると、ユーリはにこりと笑った。
 暴力的な妻だ。ある意味。
 私は、肩を掴んだままユーリを見下ろした。
 私を見上げている黒い瞳、すねたように突き出し気味の下唇。
 それから、ヒモが解かれたために開いたガウンの隙間から、白く滑らかな胸の膨らみがのぞいている。
 その下には触るとすべすべしている腹部と・・赤いパンツ・・・。
「ユーリ」
 私は咳払いをした。
「その・・パンツは・・脱がせると効果が無くなるとか言うことは・・」
「あっ、大丈夫だよ、あとでちゃんと穿かせてくれれば!」
 弾んだ声で告げると、ユーリは私の腕から抜け出して、枕元からなにか引っぱり出した。
「カイルのもあるのよ!」
「・・・」
 私は得意そうにユーリがひろげて見せた赤いパンツを眺めた。
「これを私が穿くのか?」
「そう!!おそろい!!嬉しいねっ!!」
 まったく嬉しくは無かったのだが、ユーリの顔を見ると思わず笑顔になってしまった。
「ああ、嬉しいよ」


 抜き取った赤パンを思いっきり遠くに放り投げたのは、せめてもの意趣返しだった。
 結局、あとで拾いに行くハメになったが


              おわり  

     

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