紡ぐ音

                                  
 by伽琳さん


 夜の音がする。

 虫が静かに鳴き、草がすれあい、幾千もの星々が眩い自己主張をする。

 そして、今私の居る部屋・・・カイルの部屋からも「夜の音」がする。
 二人の腕が絡み合い、体がシーツをこする音。
 互いの名前を呼び合う声。
 その時々に漏れる、甘い吐息。


 こんなに幸せでいいの?


 幸せすぎて、涙が頬を伝う。そんな私に気がついたのか
「ユーリ?どうした?どこか痛かったか?」
 カイルは慌てて聞いてくる。
「ん・・・音が・・・するの。」
 そう言ってキスをする。長い長い・・・長いキス。唇を離して
「ホラね?カイル。あなたの吐息だけ、胸の奥まで響くよ。」
 にっこり微笑んで言うと、カイルは一瞬だけ驚いたような顔をして、ぎゅっと抱きしめてくれた。

 氷室を想い、拒み続けていた夜を、私は後悔しない。
 あの時の私にはこの人を受け入れられるような時ではなかった。
 よしんば受け入れたとしても、それは後々深い傷となる。

 これからは近衛長官としてではなく、皇妃としてこの人の役に立つよう。
 そして皇妃としてではなく、女としてこの人を護れるよう。
 カイル、貴方が私の全てだから。
「だ・・・いす・・・き。」
 喘ぐ息の間から、愛しの言葉を紡ぐ。

 この瞬間があるから、私はがんばれる。


                                  おわり

           

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