まつさん奥にて20000番のキリ番ゲットのリクエストは「○○の国の××くんリターンズ」いいのかね?


シャボン玉・リターンズ


「ああ、もう疲れた!」
 言いながらユーリが冠をとった。
 重い宝石で飾られたそれは、ユーリの手から転げ落ちる。
 そばに控えたハディがあわてて手を伸ばして受け止める。
「こういうのって、苦手なのよね」
「でも、今日はとてもご立派でしたわ!」
 お湯を張った桶を用意しながら、リュイが言った。軽い布で作られた着替えをとりだして、シャラもうなずく。
「そうですわ、使節はずうっとユーリさまに見とれていましたもの」
「使節って、ねえ」
 ユーリは大げさにため息をついた。
 使節の歓迎のために、今日は一日窮屈な正装で玉座にかしこまっていなければならなかったのだ。
「最近、多くない?公式訪問とかさ」
「だれもが評判の皇妃に一目会いたいと思っているんです」
 広間の人々の賞賛の目がユーリに集まっていたことを思い出して、シャラはうっとりと言った。とりどりの宝石を身につけたユーリは限りなく美しかった。
 どんな評判だか。
 自覚のないユーリが頭を振って腕輪を抜き取ろうとしたときだった。
「皇帝陛下のおいでです!」
 扉の外で声がした。
「ま、陛下ですって!」
「たいへん、まだお支度は出来ていないのよ?」
 三姉妹が顔を見合わせる間に、扉が開いた。
 あわてて伏せた三人に、入ってきたカイルが言う。
「もう、さがっていいぞ」
「カイル?」
 正装のままのカイルをユーリは不思議そうに見た。
「今日は・・早いのね?」
 いつもカイルは自室で衣服を改めてから、この部屋にやってくる。
 それが、今日は広間で見たのと同じ服装のままだった。
 なにか、緊急に話し合わなければならないことでも起こったのだろうか。
 三姉妹が、着替えや湯桶をそのままに退出するのを見送ってから、カイルはユーリに向き直った。
「今日の使節への態度だが」
「なにか・・・へんだった?」
「ああ、あれはよくない」
 カイルが憮然とした顔で言ったので、ユーリは今日一日のことを必死で思い出そうとした。
 確かに、退屈はしていた。けれど、精一杯使節に歓迎の言葉をかけていたと思うのだが。
「どこがいけなかった?あたし、一生懸命愛想良くしたんだけど」
 眉根を寄せたままカイルはユーリの腕を掴んで引き寄せる。
「・・・・愛想がよすぎだ。私以外の男に笑いかけるなんて」
 言うと、あごに手を添えて上を向かせる。
「おまえの笑顔は私だけのものなのに」
「・・・カイル・・」
 引き寄せられるように唇を重ねると、ユーリはうっとりと腕をまわした。
「あれは、ただの挨拶だよ?あたしがカイルのものだって知っているくせに・・・」
「ユーリ・・・」
 重たい宝石をじゃらじゃらつけたまま、二人がいちゃつき始めたときに、やはり異変が起こった。
 ぽこ。
 リュイが置き去りにしたたらいの中に、泡が立った。
「おまえが本当に私のものだという証拠を見せてくれるか?」
「あ・・っ・・・」
「・・・あああああああああああ!!!」
 いつぞやと同じように叫び声が上がった。いつぞやよりは少ない量の湯が跳ね上がる。
「!!!」
 とっさにユーリははだけられた胸元を掻き合わせた。
 二人は弾かれたように振り返る。
 案の定、そこにはたらいの中に立つ姿があった。
「・・・・またおまえか」
「氷室!」
 ぽっかりと口を開けたまま、たらいのなかに氷室聡が突っ立っていた。
「・・・あああ・・・あ?」
 氷室は口をふさぐのを忘れて、周囲を見まわす。
 めざとく、ユーリを捕らえる。
「夕梨!?夕梨なのかっ!?・・・おまえどうしてここに・・」
 そうして、豪奢に飾り付けられた正妃の間をもう一度見まわした。
「わかったっ!ここは便器の国だな!?」
「・・・また、トイレに引き込まれたの?」
 カイルの後ろに隠れながら、ユーリが慎重に訊ねた。
 服をもう一度着付けたかったのが、抜き取られた帯はカイルがしっかり掴んでいた。
「そうなんだ、おれはやっとさっぱりしたと思ったら・・いや、そんなことはどうでもいい!ここはどこなんだ?ソープじゃないなっ!?」
 カイルが無言で歩み寄る。
「・・・その格好!分かった、これはアラビア人と奴隷というシュチュエーションでプレイしていたんだ!ユーリ、おまえは今度はイメクラに!」
「イメクラってなによっ!」
 氷室が説明しようとして口を開いたときに、カイルが肩をむんずと掴んだ。
「カイル!?」
 叫んだユーリは、確かに見た。
 カイルの顔が覆いかぶさる瞬間、氷室がまぶたを閉じるのを・・・


「トイレの前で寝るのやめなさいって言ってるでしょう!?」     
姉の足が乱暴に脇腹をこづいたので、ようやく氷室は目を開けた。
「あんたねえ、邪魔なのよ!」
「姉ちゃん・・」
 氷室は、赤いままの頬を両手で包んだ。
「運命って・・・信じる?」
「はあっ!?」


「氷室、帰ったのかしら?」
 ユーリがほとんど空になったたらいをのぞき込みながら、言う。
「ああ、帰っただろう。前と同じに」
 カイルの腕が、後ろからまわされた。
「・・・カイルって、男相手でも凄いんだね・・・氷室すっかりその気だった・・・」
「凄いって、どう凄いんだ?」
 耳元に口づけながらカイルが囁く。
「それより、証拠は・・・見せてくれないのか?」
「・・・知ってるくせに」
 懲りない二人は、やっぱり懲りないのだった。


                  おしまい。
        

      

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