これは、ひねもすさんとしぎりあの「交換メール」から生まれたお話です。
 かわいい話のフリをしていますが、もともとは「カイルは365日がんばっているわけじゃない」という、ひじょうに「奥座敷」な密談でした。さすが代官と越後屋の名を欲しいままにしている(だれも欲しがらないので。だれか欲しがって・・・)ふたりですね。




    ひねもすさんSIDE



【 ひごと、よごと 】



あたしが古代に来て、もうすぐ一年半。

日毎に寒くなる。
ハットゥサに冬が来ようとしている。
でも、あたしは、夜毎に体が熱くなる。
カイル皇子があたしを抱きしめて眠るから。
寒さが深まるごとに、皇子はあたしを強く抱きしめる。

「ユーリ、もう休もう」
「うん・・・。ねえ、カイル皇子・・・。」
「なんだ」
「あのね、たまには、一人で休みたいんだけど。」
「なんでだ?」
「うん・・・、ちょっとね。」
「なんでだ?理由を言えないなら部屋を与えるわけにはいかないな」
「理由を言えばいいの?」
「理由にもよるがな」
「・・・・・・・・・・・わかったよ。このまま休むよ」
「ああ、それが利口だな」

カイル皇子は少し怒ったような顔をして眠ってしまった。
いつものように、あたしを抱きしめて。
今日は、一人で休みたいのに・・・・・・・。


・・・・ああ、オンナのコの時くらい一人で休みたいよ。
汚したりしないか、とっても不安。
朝起きたら、シーツが真っ赤なんて、絶対やだ。
それをカイル皇子が見たらもっとやだ。
それに、周りの皆、特に三姉妹は誤解するだろうな・・・。
なのに、皇子はあたしを横向きにして強く抱きしめるから、心配だよ。
夏の間はそんなに引っ付いてなかったのに、寒くなったら、なんか凄く密着してる・・・。
それに、それにさ、凄くドキドキするんだもん。
カイル皇子にこのドキドキが伝わったらどうしよう。
皇子はすぐ、すーすー寝ちゃうからいいけど、あたしは寝付けないよ。
もう、わかってんの?カイル皇子!

                    〜 あらあら 〜


『いいや、何も分ってないのは、ユーリおまえだよ。』


                    〜 そうだよね 〜

           

    しぎりあSIDE


【 D ・ B ・ D 】


「・・痛っ・・」
 身体に感じた痛みに、小さく声をあげてしまった。覚えのある、痛み。
 これって、そうだよね?
「ま、待ってカイル」
 内股をゆっくり撫で上げていたカイルの手首をやんわり掴んだ。
「どうした?」
 すぐに怪訝そうな顔がのぞき込む。
「・・・ごめん、始まったみたい・・・」
 言いながら、少しだけ頬が赤らむのを感じる。いまさら恥ずかしがることじゃないんだけど。
「そうか、そろそろだったな」
 カイルが少しだけ身体を起こしたので、隙間を抜けて寝台からすべり降りる。
 はだけられた胸元をかき合わせると、枕に頬杖をついているカイルを見た。
「・・・ごめんね」
「気にするな、着替えるんだろう?」
 琥珀色の瞳が優しい。うなずくと急いで次の間にむかう。
 ハディ達はもう、下がったようだった。真っ暗な小部屋の中、手探りで灯りをつける。 ぼんやりと広がった光の輪の中、取り出した着替えを持って座り込んだ。
 また、来ちゃったか。
 こればっかりは、仕方ないよね?
 のろのろと、夜着の袖から腕を抜く。新しい肌着のひんやりとした感触が、よそよそしい。鼻の奥がつんと痛くなった。
 汚れた肌着をぼんやりとながめる。
「ユーリ、気分が悪いのか?」
 いつのまにか、カイルが扉を開けて立っていた。心配そうな顔で、たずねてくる。
「あ、ううん、すぐ行くから」
 手早く身繕いをしているうちに、大きな腕があたしを抱き上げた。
「いつまでもこんなところにいると、冷えるぞ」
 カイルの腕は暖かくて、思わず肩にしがみつく。
 あたしが震えているのを誤解したのか、大股に引き返す。
「ほら、もうこんなに冷たい」
 寝台に下ろされた。見上げるうちに、毛布を引き上げながら寄り添ってくれる。
 手のひらが、柔らかく腰のあたりを包んだ。
「・・・だるいか?痛むようなら、薬師を呼ぶが」
「大丈夫だよ、病気じゃないし」
 カイルの手が擦ってくれるおかげで、重さが遠のいた気がした。
 胸に顔を埋めて、瞳を閉じる。
 カイルはいつも、優しい。だけど、あたしはなんにもしてあげられないね。
「・・・ごめんね」
「・・・うん?」
「始まっちゃって、ごめんね」
 優しい腕が、あたしをぎゅっと抱きしめた。耳元で、とても優しい声が言う。
「もう少しだけ新婚気分を楽しもう・・」


                   おわり    

    

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