ここは、湯殿

              by風呂桶屋マリリンさん

「とう様、熱い。」
「とうしゃま、あっちゅうい。」
「まだまだ。ちゃんと肩までつかってないとだめだぞ。」
「「でも・・・・・」」
「まだ、だめだ。」
 睨まれた皇子たちは浮かしかけた身体を渋々沈めた。
「にいしゃまあ、あっちゅいよおぉ。もおぉぉぉぉやだあ。」
「ピアぁ 聞かなかったらよかったねえ。」
「うん」
 湯殿には、今にも泣き出さんばかりの二人の皇子の姿があった。
 のぼせる寸前にやっと湯船からあがることを許された二人は、ぐったり。
 のろのろと服を着ている。
「さっ、デイル・ピア行くぞ。」
「とう様、どこ 行くのぉ?」
 もう涙声である。
「このまま寝台に入って、おとなしくしてないとな。」
「「え〜 もう寝るのお」」
「とうしゃまあ、まだ明るいよお。」
「そのままでいると、湯冷めしてしまうぞ。さあ、早く」
「「え〜うそ〜」」


「かあ様」
「かあしゃま」
 真っ赤な顔をした二人が帰ってきた。
「僕たち今度から遠慮するからね。」
 こくこくとピアも頷く。
 いったい何を教えてもらったのか。
 不安なユーリに、二人が口々に言う。
「かあしゃま、かあしゃまもちゃんと湯船に入っていないから、とうしゃまが見張っていたんだねえ。」
「・・・・・・?」
「とう様、厳しかったよ。」
「もう、頭ぼうっとしてる・・・」
「かあ様、早く出たいよって泣いてたんだねえ。」
「・・・・・・・・」
 いったい何を教わってきたんだろう?
 手をつなぎながら、とぼとぼと歩いていく二人。
「二人とも、どこに行くの?」
「とう様が寝台に入っておとなしくしていなさいって」

「デイル・ピア また暖めてやるからな。」
 後ろから聞こえる父親の声に、二人は力無く頭を横に振って言った。
「「もういい、遠慮する。」」
 そのまま、二人で寝室へ消えていくのをユーリは見送りながら思った。
「これから、あの質問に悩まされることだけはなさそうだわ。」と


                 おしまい

     

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