いらいらウインター

               by雛祭り屋マリリンさん

「三姉妹を呼べ」
 低くて、怒りのこもった声になるのを止められない。
「陛下?」
「聞こえなかったのか、キックリ。ハディとリュイ・シャラを呼べと言ったのだ。」
 キックリはためらっていたが、小さく「はい」と答えると呼びに行った。

 私は、拳を握りしめた。
 あれほど、きつく言いつけておいたのに・・・・・・・

「お呼びでございますか?」
 三姉妹がひれ伏す。
「呼んだからきたのだろう?」
 私の言葉に三姉妹は身体を縮める。
 なぜ呼ばれたのか、言われずともわかっているはずだな。

「ここにあった雛人形はどうした?」
「・・・・・・・・・・・・・」
 ああ、どうしたか、なんてわかっているのに・・・・
 嫌みな質問だ。
 これは、完全に八つ当たりだ。
 わかってはいるけれど、止められない。
 暴君と思わば思え・・・・・私だって一人の愚かな父親にすぎないのだから・・・・

「雛人形はどうした?」
 返事がないことにいらだちながら、再度尋ねる。
「し、しまいました。」
「しまわずに飾っておくようにと言いつけたはずだが?」
 ハディが、覚悟を決めたように顔をあげた。
「ユーリ様のお言いつけです。雛祭りが終わったらすぐに片づけるようにと」
「私の言うことよりも、ユーリの言うことを聞くというのだな?」
「ユーリ様にお仕えする者として、ユーリ様のおっしゃることを無視できません。陛下は私たちの忠誠心をお試しになっているのですか?」
 三姉妹にとって、ユーリが絶対なのだということをあらためて認識する。
 皇帝の言うことよりも優先されるなんて・・・・  
 唇をかみしめる。

「陛下、陛下はなぜ雛人形をずっと飾っておくようにとおっしゃるのですか?」
「もういい、下がれ。」
 これ以上話をしていると、何を口走るかわからない。そう思った私は三姉妹を下がらせた。
 それに、今年はもう何を言ってもしょうがないことがわかっている。

 私は雛人形を飾ってあった空間を見つめた。
「お雛様をすぐに片づけないと、お嫁に行くのが遅くなっちゃうの。だから、すぐに片づけないとね。」
 ユーリからそれを聞いたとき私は思った。
 ということは、雛人形をずっと飾っておけば、マリエを嫁にやらなくて済むのか?。
 可愛い大切な娘を嫁になんてやりたくない。
 ずっと側に置いておきたい。
 そう思った私は、それから毎年雛人形を片づけさせまいとしているのだが・・・・・
 私の陰謀は、いつも三姉妹に妨害される。

 はあぁ。
 私は俯きながら、来年の雛祭りの時期に三姉妹をアリンナへやる口実を考え始めていた。

                  おわり

     

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