ぶるぶるスプリング

                          by マリリンさん

「とと丸!」
 この声は、ピア皇子だ。なんか、怒っているような・・・・
 出ていくのはやめよう。
 おれは、隠れたつもりだったが、何しろ王宮中庭の池の主と言われる大きな体。
 隠れたことにはならなかった。
「とと丸〜!」
 ああっ 声に迫力が感じられる。
 おれは観念して、ピア皇子の前に姿を現した。

 おずおずと上目遣いにピア皇子を見る。
 まずい、これはかなり怒っている。何をしただろう。
 心当たりがありすぎて、特定できない。
「マリエに何を言った。」
 ん?
「マリエに何を言った!」
 はて?
「マリエが、にいちゃまもいたずらっ子だったのね。と言っていたぞ」
 そりゃ、真実だ。おれでなくても、誰もが知っている。

 マリエ姫と言えば、最近釣り竿とたも網を持って現れるが・・・・・・
 兄弟だな。一緒のことをしている。と思わずつぶやいてしまったっけ。
 それか?
 皇帝は皇妃のこととなるとみさかいがなくなるが、ピア皇子はマリエ姫のことになるとみさかいがなくなるな。
「そんな、昔のことをマリエに教えるな!」
 ああ、その表情。皇帝にそっくりだ。
「とと丸?聞いているのか?」
 はいはい、聞いていますよ。
 だけど、おれはいたずらっ子だったなんて一言も言ってませんよ。
「まったく、マリエのお転婆には困ったもんだ。」
 ふう、ピア皇子がため息をつく。
 はいはい、でもしょうがないでしょ?
 いたずらっ子のにい様に育てられたんですから・・・・
「何か、言ったか?」
 まったく、そういうところは鋭いんだから。
 自分だって父親である皇帝の言うことを聞かず、池にしょっちゅう転がり落ちていたことを忘れたのか?
「とと丸!」
 これ以上聞いていてもしょうがない。
 マリエ姫が来ても、えさに食いつかず、たも網にも入りませんよ。
 それでいいでしょ。
 相手をしなければそのうちマリエ姫もやめるでしょうから。
 おれは、後ろも見ずにとっとと引き上げた。
 その後ろ姿を見ているピア皇子の握りしめた拳は、ぶるぶると震えているに違いない。

 おれは、振り向くと特大のアッカンベーをした。

                       おわり

     

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