ナッキー☆ハーレムサイド


 カルケミシュ王宮別邸の奥深く、我らがナキアは眉根を寄せていた。
「ナキアさま、お肩をお揉みいたしましょうか?」
「ナキアさま、ワインはいかがですか?」
 先ほどからかいがいしく世話を焼いているのはウルヒ、が二人。
 どちらかがクローンでどちらかがサイボーグなのだが、服を着ている今はどちらがどちらか区別が付かない。
「つまらぬ」
 吐き捨てるように言うと、ナキアは差し出されたカップを払いのけた。
 カシャーン!
 床の上に散らばった破片を見たウルヒ達はあわてて雑巾を取りだした。
「まあ、姫さま!飲み物を粗末にするなんて!」
 ちょうど入ってきた侍女が憤慨した。
「バビロニアの御母様がご覧になったら嘆かれますわ」
 ナキアはぷいと顔を背けた。
「私は退屈しておるのじゃ」
「では、なにか手芸でもなさりませ」
 侍女は言うと持っていた大きな裁縫箱をどっかりと机の上に降ろした。
「そうすれば時間もつぶせて出来たものを売れば現金収入になって一石二鳥です」
 籠の中から繊細なレースを取り上げると、侍女は目を細めた。
「それにウルヒさま達にも最近は裁縫をお教えしているのですよ」
 名前を呼ばれて、床の上に這いつくばっていた両ウルヒが顔をあげた。
「「この雑巾は私が縫ったのです」」
「なかなか素晴らしい運針でしょう?バビロニア式は放物状に運針するのですが、ウルヒさま達はヒッタイト式に平行線を縫うようですが」
「雑巾に国の違いなどあるものか!」
 ウルヒ達が掲げた汚れた雑巾から目をそらしながら、ナキアは吐き捨てた。
「そのような汚らわしいモノを見せるでない」
 しょんぼりと肩を落としたウルヒ達は、急に顔を輝かせた。
「「私たちはナキアさまに差し上げるモノがあります」」
 ごそごそと服の下から何かを取り出す。
「侍女殿から教えて頂いて作りました」
「まあ、なんでしょう?姫さま、ウルヒさま達が!」
 侍女につつかれてナキアはしぶしぶ視線をもどした。
 二人のウルヒが並んで何かを差し上げている。
「・・・なんじゃ、これは?」
「「腹巻きです!!」」
「姫さまは毎日腹巻きをされているのですよ!なんて気の利いたモノを!!」
 感極まる侍女の横でナキアは椅子を蹴って立ち上がった。
「そのようなモノ、いらぬわ!」
「あっ、姫さま!?」
 侍女の制止を振り切って、大股に部屋を出てゆく。
「「いったい、なにかお気に召さなかったのでしょうか?」」
 不安そうなウルヒ達に侍女は首をかしげた。
「さあ・・なんなのでしょう?」
 しばらくの間ウルヒ達の手の中の腹巻きを見ていたが、ふいに手を叩いた。
「そうですわ、その腹巻きの無地な所がお気に召さなかったのでは?姫さまはたいへんなお洒落でいらっしゃいますもの」
 ウルヒ達は顔を見合わせた。
「「しかし、私たちの今の技術では・・・」」
「大丈夫!」
 侍女は胸をどんと叩いた。
「私が教えて差し上げます。すぐにお二人ともチューリップの編み込みやアフガン編みの腹巻きが作れるようになりますよ。だって、とても筋がいいんですもの」
「「ありがとうございます!!」」
 ウルヒ達は感謝に瞳を輝かせた。
 もうすぐ、目の覚めるような腹巻きが編めるようになる。
 たとえば、駿河湾から見上げた富士山を一面に描き出したり。
 それはどんなにナキアに似合うことだろう。
 うっとりしながらウルヒ達は棒針を手に取った。

 そのころナキアは別邸を囲む高い壁に八つ当たりをくりだしていた。


                         おわり

     

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