【カルタとり】

                      byひねもすさん

「風が暖かくなってきたな。もうすぐ、フルリだ。今でもこの季節は不安だよ。おまえがどこかに行きそうで。」
カイルはユーリに、軽く唇に触れる程度のキスをすると夜衣に着替え始めた。
「ねえ、カイル!フルリってお正月みたいなものだよね」
「お正月?」
「新しい年になるって意味でしょう?、あたしの国ではお正月って言うの。晴れ着を着て、お節を食べて、皆でカルタ遊びをするのよ。そうそう、お年玉が貰えるの!」
「晴れ着を着るのは同じだな。おまえもフルリでは、着飾ってもらうからな。でも、お節とカルタ遊びとお年玉ってのはなんだ?」
「え〜とね。お節はご馳走のこと。お年玉は子供が大人からお金を貰うの。カルタ遊びは・・・・・説明するのが難しいよ。」
「そんな難しい遊びなのか?」
「ううん。カルタがあれば説明するのも簡単なんだけど・・。そうだ、私が作るよ。皆で遊ぼう!ね、カイル。」
ニッコリ幸せそうに笑うユーリが愛しくて、カイルは抱きしめながら言った。
「ああ、おまえの好きなようにすればいい。必要なものがあったら何でも用意するよ」
「ありがとう、カイル。でも、粘土板さえあればできるよ」
カイルは、今度は熱くとろけるような口づけをユーリにした。そして、そのまま寝台へと抱きかかえて行った。


**************


3日後、ユーリが作ったカルタができた。

「ああ、やっとできた。みんな、ルールを説明するからよく聞いて」
ユーリ主催のカルタ取り大会のために側近達が集められた。
ヒッタイトは平和だ。
絨毯の上には、側近達や王宮関係者の似顔絵が描かれたタブレットが散らばっている。
ユーリはなかなか絵が上手だ。
「あたしが読み札を読むから、皆は、読まれた内容と対応する絵札を取るのよ。一番多く絵札を取った人が勝ち!商品は・・・一週間の有給!ってのはどうかな?カイル、だめ?」
「いいや、かまわないが」
「じゃあ、決まり。一週間の有給目指して頑張って!」
側近達は、フムフムと頷きながらユーリの話を聞いた。

「まずためしに読んでみるよ。『なにゆえに、そんなに根性まがったの』」
「はい!」
ハディがナキア元皇太后の似顔絵タブレットを掴んだ。
「はい。ハディ当たり!こんな調子で遊ぶのよ。じゃあ、次いくよ。」
「『どっちだろ?だんなも区別がつかないよ』」
「はい!」キックリがリュイとシャラが描いてある粘土板を取ったが、双子に睨まれた。
「はい、当たり!次、『仕事して、給料貰って寝るだけだ。』」
「はい。」ハディがイルの似顔絵タブレットを掴んだ。
イルはショックだったようだ。
「次いくよ!『いくつなの?何年たってもぼうや顔』」
「はい。」シャラがジュダ皇子の似顔絵タブッレトを取った。
「当たり!あたしも童顔だけど、ジュダ皇子は会った頃と全然変わらないんだもん。母親は老け顔だったのに、不思議だよね」
「ええ、いったい何を食べてればああなるんでしょう?」最近、お肌のつっぱりが気になりだしたハディは真剣な面持ちで呟いた。
「さあ、次!『純情そう、そんなあなたは二人妻』」
「はい」またも、ハディ。
「今のところ、一番じゃないハディ。皆も頑張って!
 次、いくよ。『行きそびれ、たまには隙も見せなきゃね』」
「はい!」今度はミッタンナムワがハディの似顔絵タブレットを掴んだ。
「うんうん。あたし心配なんだよ、ハディのこと。
 はい、次いくよ。『自重して、あたしの体力かんがえて』」
「はい」ミッタンナムワを睨みながら、今度もハディがカイルの似顔絵タブレットを掴んだ。
「当たりだよ。よく分かったね。」
「それは、ユーリ様の侍女としてお仕えしてるんですもの」
「じゃあ、次。『おつかれさん、毎晩お勤めご苦労さん』」
「はい!」今度はシャラだ。
「そうそう、これはあたしなんだ。ははは。カイルってばどうしたの?そんな顔して?
 次、いくよ!『ない!ない!ない!トイレはどうする?気になるな』」
「はい!」今度はリュイがウルヒの似顔絵タブレットを掴んだ。
「そうよね。トイレは個室なのかしら?立ったままじゃ無理よね。」シャラが不思議そうに言った。
「次行くよ。『片思い、いつまでたっても報われない』」
「はい!」シャラだ。
「ルサファ、早く幸せ見つけて子孫を増やしてね。カイルもそう言ってたし。
 次行くね、『くさそうね、たまにはバンダナ洗ってる?』」
「はい! カッシュ、私も言おうと思ってたのよ!髪の毛なんて一番汚れやすいのよ。たまには浸け置き洗いしなさいよ」ハディがカッシュの似顔絵タブレットを掴みながら思やり深い言葉を吐いた。
「次!『いい人ね。いつでも最後はその言葉』」
「はい!」リュイがミッタンナムワの似顔絵タブレットを掴んだ。
ハディは嘲笑うかのごとき顔で、うなだれるミッタンナムワを見た。
「次、『頼りない、早くお仕事覚えてね』」
「はい」ハディがシュバスの似顔絵タブレットを掴んだ。
シュバスは泣きそうな顔になっていた。
「凄い。ハディが優勝!準優勝は双子だね!」

カイルと男性側近達は悲しげな面持ちで、今年のフルリを迎えた。
                      

                             (おしまい)

     

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送