KISSからはじまるミステリー


 最初のキスを覚えている。
 行きがかり上というか、突発的というか。
 初対面なのに唇を奪われた。
 二回目のキスはこれもけっこう行きがかりみたいなものだったかも。
 あの時のカイルはかなり酷い人で。
 あたしは「テイソウのキキ」だった。
 三回目のキスは・・・やっぱり行きがかり上かな?
 あの時は取り乱しててあんまりよく分からなかったけど・・・。
 それから四回目は・・・。

 カイルの指があごにかかる。
 引き寄せられて、重なる唇。
 唇の柔らかさや舌の熱さも慣れ親しんで。
 すっかり呼吸のタイミングも知り尽くしてしまった。
 開放されて、カイルの胸で息継ぎをする。
「ねえ、あたしたちのファーストキスっていつだと思う?」
「はあ?」
 肩に腕をまわしたまま、カイルが寸頓狂な声を上げる。
「ファーストって・・最初に出会ったときに・・・」
「違うよ、あれはノーカウント!」
 あたしは指でカイルの鼻を弾く。
「だって、あの時のカイルって遊び人だったもん」
 相手が誰でも良かったんでしょう?
「ホントのキスはトキメキがないとだめなの!」
 つい今しがたみたいに、ふわっと身体が浮き上がる感じ。
 まぶたを閉じる瞬間のどきどき。
 カイルはしばらく考え込んでいる。
 今、頭の中でいろいろな場面が駆けめぐっているのかもしれない。
 あたしが意識し始めたときよりずっと後だったらいやだなあ。
「やっぱり・・」
 カイルが真面目な顔でうなずく。
「最初に出会ったときだな」
「なにそれ?」
 覚えてないから誤魔化そうっていうの?
「一目会った瞬間に運命を感じた」
「嘘ばっかり!」
「嘘じゃないさ・・・でないと舌までいれないぞ?」
 にやにや笑い。だめだ、本当に始末に負えない遊び人だったんだ。
「そういうお前はいつなんだ?」
「出会った時じゃないのは確かよね」
 あたしの言葉に、カイルは大げさに肩を落としてみせる。
「片想いだったのか」
 こういう発言がどうにも信用ならないんだよね。
「遊び人、嫌いだもん」
 あたしはカイルの腕の中でそっぽをむく。
 今のカイルは信用できるけど、昔のカイルは信用できない。
「どうしたら、振り向いて貰えるのかな?」
 うなじにかかる息がくすぐったい。
 じらされるのもじらすのも苦手だから。
 あたしはカイルの腕におでこを当ててつぶやく。
「思いっきりどきどきするようなキスをして?」
 くるりと視界が回転して、カイルの手のひらが頬を包む。
 優しい瞳がのぞき込んでいる。
「・・・了解」
 
 あたしはかかる息を身近に感じて、胸を弾ませながらまぶたを閉じる。


                           おわり
  

     

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