実りの秋

                       by 豊作屋マリリンさん


 今年も実りの秋を迎えた。
 落ち葉が、舞い落ちる様をうっとりとした表情で見つめている皇妃。
 そして、それを見つめる皇帝。

 遠巻きに見守る側近たちは、固唾を呑んで見守っている。


「ねえ、カイル。」
 ゆっくりと皇妃の唇が言葉を紡ぎ出す。
「秋なのねぇ。」
 差し出した皇妃の手に落ち葉が舞い落ちる。
 ふわりと落ちたそれをそっと掴むと皇妃はゆっくりと振り向いた。
 皇帝を魅了してやまない微笑みを浮かべながら・・・・

「ねえ、今年も私が作る焼き芋 食べてくれる?」
 小首をかしげながら皇帝に問いかける。
 そのしぐさのなんと可愛らしいことか・・・・


『陛下、しっかり』
 側近たちは、拳を握り締め、密かに檄を飛ばす。
 あれほど綿密に秘密会議で作戦を練ったではないか。

 なのに、なのに、なんということだろう。

「ああ、もちろん。」
 皇帝の一言にがっくりくる側近たち


「本当?、嬉しい。」
 瞳を輝かせながら近づいてくる皇妃を腕の中に納めながら、気づかれないようにため息をつく皇帝。

 『食べたくない』の一言を言えるのはいつのことか。
 本人にもわからないし、側近にはもっとわからない。


「明日の食事は抜きだな。」
「多くの人を丸め込むことはできるのに、なぜユーリ様を丸め込むことができないんだろう。」
「ユーリ様の笑顔には敵わないということね。」
 はあぁ  結局しわ寄せはこっちにくるのよねぇ。

 皇妃にいないところで八つ当たりを受ける側近はたまらない。

 ちらちらと舞い落ちる落ち葉が恨めしく思える、秋の一日だった。

                    おわり

     

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送