君をおもって。


                               byあーやさん



バタン

「ふう〜」
 ラムセスは軽くため息をつくと ギシっと椅子に腰かけた


 
   ヒッタイトから帰郷してもう十日になる
    しかし、今日まで敗戦の事後処理がいろいろと重なり
    ずっとテーベで足止め状態だったが
    十日目にしてやっとメンフィスの家に、自室に帰ってこられたのだった。


「見納めだ・・・か。」

    今のエジプトにまた長い遠征をするほどの余力がないことは確かだが
    別にユーリに会いに行くだけならば
    わざわざ軍をつれなくても俺一人で会いに行くことも不可能というわけではないのに
    何故俺はあんなことを・・・?


 
                             そういえば 少しは寂しさを感じてくれるか?
                             いつでも会えると言うより−−もう会えない−−と、そう言ったほうが。


「未練だな・・・。」


    ラムセスはクッと軽く自嘲気味に笑った


              ハットゥサに戻ればすぐに結婚式だろう。


           結婚式か・・・
           確かネフェルトが
           ルサファに会いにいけてユーリにお祝いも言えるという
           一石二鳥の名代をつかみ取るのだとはりきっていたな。


                   そういえば、あいつの花嫁姿はムルシリ2世より早く見たな・・・
                   そのことを書いた書簡でも奴に送りつけてやろうか・・・



           これからヒッタイトはムルシリ2世とユーリの下で
           急激に強大で豊かな国となっていくだろう。

                  奴の創る国よりもっと強大で豊かな国を創った時か・・・



「フッ やってやるさ、もう俺には失うものはないからな」


    ユーリをエジプトに連れてきてから
    正直俺はユーリが手に入るならば覇権などいらぬと
    あいつを守るために今の生活のまま 
    何もわざわざ自分から動乱を巻き起こさなくても良いのではないかと
    考えたことがあった。

                        しかし・・・
 

         思えば
         そんな思いが俺の中に生まれたからあいつは
         俺のところに留まっていなかったのかもしれない



 
 彼女は女神だから
 志に弱さを持った者のもとには 留まりはしない
 いつだって志を強く曲げない者のもとへと 戻ってゆく




 ラムセスはゆっくり眼を閉じると 一言つぶやいた

「だが、やはりユーリには会いたいな。
 立后したあかつきには、エジプトに報告がてら遊びに来るように書簡を書こう。     うん。」




 そう言ってラムセスは勢いよく立ち上がり 書斎へと急いだ。


     

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