しぎりあの「ラヴ・クッキング」と「ダブル・クッキング」のあとをマリリンさんが続けてくださいました。

トラブル・クッキング

                                             byマリリンさん

ことのおこりは執務の合間の軽食時。ユーリの作ったパンからだった。
 
愛とは、時には耐えることだ・・。
そうは、思ったが耐えられることと耐えられないことがあることにわたしは気づいた。
最近、食欲がないわたしを心配してユーリのパン作りは益々熱が入っている。
身体にいいものをと薬草が入っていたりする。
その気持ちはうれしいが、なんだかどんどん食べ物から遠ざかっていくような気がするのは、どうしてだろう。
壁土はこんな味だろうかと思ったあのときは、まだよかった。今や煉瓦を舐めているような気がする。

「お前が私のために焼いてくれたのだから、それを思うと胸がいっぱいになってね」
その言葉に偽りはない。
やけどに打撲傷、擦り傷、それにもめげず作るおまえは、ほんとうにかわいいよ。
しかし、それとユーリの作ったパンがのどを通るかどうかは別問題だ。

厨房の困惑ぶりも伝わって来る今、なんとかしなくては・・・・・
ユーリのパンを焼いた後の惨状はなかなかのものらしい。
粉は飛び散り、卵の殻は床に落ち、なにより焦げ臭いにおいが充満している。
おまけに、段取りが悪いものだから洗い物の山。 

「ハディ、決めたよ、あたし朝のパンは寝る前に焼く!!」
「寝る前って・・ユーリさま!?」
あのとき、わたしはハディが心の中で「えーっ、夜中にあの後かたづけをするのー」
と叫んでいるのに、気がつかなかった。てっきり別のことを思っているとばかり・・・・

どうやったら、パンを焼かせないようにできるか。こんな難問は経験したことがない。
そうだ。イル・バーニに任せよう。あいつは憎まれ役など痛くもないと言っていたしな。

「カイル? カイルどうかしたの?」
ユーリの声に我に返る。パンをもったままボーっとしていたらしい。
「悪いが、イル・バーニに急用があったのを思い出した。」
ユーリの心配そうな顔に、胸が痛む。まさかお前のパンのことで悩んでいたとは言えない。
そそくさと立ち上がり執務室に向かう。難問は早く解決しなくては。

「あーあ、カイルったらもう」ほとんど手のついていない食事を見てため息をつく
「最近、食欲ないみたいなんだよね。」
一人取り残されたユーリの手がパンにのびる。
「一回試食してみようっと」
「ん?」堅い。なんとかちぎって口に放り込む。
「・・・・・・・・・・」


難問は、イル・バーニの手を煩わせることもなく解決した。


               おわり

      

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