恋人がサンタクロース

                        by anaさん


 ベッドの脇で履いていたものを脱ぐ。
 脱いだ拍子によろけて絨毯を踏み外すと石の床の冷たさに震え上がる。
 慌ててベッドへのぼり毛布の中へともぐり込む。
 あー寒かった。
 ベッドの中で既にすうすう寝息を立てているカイルに向っていちおう文句を言ってみる。
「・・・待ってるって約束、やっぱり守れなかったじゃない・・・」
「・・・・・・・・・・・・すう・・・」
「守れない約束はしちゃダメだって子供たちに言ってなかったっけ?」
「・・・・・・・・・・・・すう・・・」
 返事なんかないよね、そりゃ。
 ま、しかたない。
 あたしだって当てにしていた訳ではない。
 三日も仕事で徹夜した挙句にさらに夜中まで起きてろって言うのは酷と言うモノだ。
 でもさ、やっぱりちょっとさびしいかな。
 可哀相かな、と思いつつ横を向いて眠っているカイルをごろりとあたしの方へ転がしてみる。
 あらら、口あけて寝ちゃダメだよ。折角のハンサムが台無し。ふふふ。
「三日間お疲れ様。」
 開けたままだとやり難いので無理やり口を閉めて・・・ちゅっとキスする。
 するとぐっすり眠っているとばかり思ったカイルが目を薄く開けてもごもごと言った。
「・・・ん?ユーリか・・・遅かったな・・・」
 慌てて謝る。
「あっごめん、起こしちゃったね・・・・・メリークリスマス!」
「いや・・私こそすまない・・・起きていようと思ったんだが・・・」
 おそらく半覚醒のままカイルがあたしを抱き寄せる。
「・・・子供たちはよく眠っていたか・・・?」
 あたしを腕の中へ掻い込んだら今度は足をからめてくる。
 と。
「うわわっ!」
 突然大声をあげるカイル。
「何て冷たい足をなんだ!」
「ごめん・・・だって油断して素足にサンダルで行っちゃったんだもん」
 どうやら彼はあまりの冷たさに一発で目覚めてしまったらしい。
 なぜならあたしの寝間着の裾から手が忍び込んできたからだ。
 今度こそカイルはしっかり目を開けて言う。
「お陰で目が覚めたよ。本当に私はお前を待っているつもりだったんだからな。」
「あのさー・・・寒がってる人の服をさらに脱がす訳?」
「子供たちにはクリスマスプレゼントとやらを置いてきたんだろう?お前にもプレゼントが必要だ」
 さっきまで眠っていたとは思えない実に嬉しそうな顔であたしの服を剥がし続けるカイル。
「ねぇ、寒いってば!」
 それより先に『プレゼント』って言種を咎めるべき?
 あたしが頭の中でいろいろ考えている間にカイルは手際よくあたしを裸にした。
 片手で自分の胸とあたしの胸を合わせると、もう片方は背中から下の方へとさまよい出す。
「ほら、温かいだろう?」
 そのままカイルの手はあたしの脚の間付近をなで始めた。
 どうやって背中越しにそこまで届くのかいつも不思議だ。
 このままだとカイルのいいようにされてしまうので、気の毒だとは思ったけど反撃を試みる。
「じゃ、ちゃんとあっためて」
 あたしは足の裏をカイルの太腿にぴったりとくっ付けてみた。
「・・うっ!!」
「ね?冷たいでしょう?」
 でもカイルはあまりの冷たさに顔はしかめても手はゆるめない・・・さすがだ。
「・・・今夜は自分の大切な人の幸せを願う日なんだろう?」
 思わず身震いしながら言うカイル。
「だったら私の幸せも願ってくれ。」
 わかった。
 文字通り身をもって妻を労わってくれる夫にあたしも妻としての愛を示しましょう!
 カイルの首筋、頚動脈のあたりをぎゅっとつかまえてささやく。
「うん、いつまでも幸せでいてね」
「・・・っっ!」
 手も勿論冷たいんだよ。
「これは・・念入りに温めないとダメだな」
 懲りないカイルは本腰を入れてあたしを温め始めた。
 わかったよ・・・こうなったらあきらめて温めてもらう事にするよ。
 もう一度・・・メリークリスマス!



    

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