仁俊さん、奥にて3800番のキリ番ゲットのリクエストは、「イル&ハディ」。いつまでも書かなかったら。「二人ならなんでもいいです」って・・・らっき〜!!



それから


 ハディは差し出された粘土板を食い入るように見ていた。
(た、高い・・)
 ちらりと目を上げれば上品そうな中年女性が満面の笑顔でこちらを見ている。
「・・・これ、高いですね・・」
 まあ、と女性は目を見開いた。
「それは、まあ。ですがお嬢様このようなことを申してはなんですが・・」
 女性は気の毒そうな表情を顔いっぱいに作った。
「やはり、最近はキャリア指向とはいえ、女の方が20歳過ぎられますとね」
 行き遅れってことか。ハディはむっとしたが事実だった。
「それに、お嬢様の条件も」
 手早く手元の粘土板を取り上げながら、女性は続ける。
「後宮女官長という地位はご立派ですが、殿方というものは女性に地位をあまりお求めになりませんし・・それに希望される殿方の条件も・・健康な体と公正な人柄・・こちらはよろしいのよ、でも次の身分はなくともそれ相応の地位というのが」
「私、やはり陛下のお側にお仕えする身分ですから」
 女性はゆっくりかぶりを振った。
「条件に合うお方なら王宮にもおられるでしょうに」
 ぐっとハディは詰まった。
 分かっていることを言われるのは辛い。
「いたら、こちらには参りませんわ」
 女性は微笑んだ。
「そうですわね、ご安心下さい、当協会ではハットウサ一の会員数を誇っています。必ずやご希望に添える方がいらっしゃいますよ。会費は高いと思われるかもしれませんが、それは信頼できる情報料だと思っていただければ」
 ハディはもう一度粘土板を見た。
 高い。でも、仕方ない。
「分かりました、入会します」
「ありがとうございます」
 何が悲しくて、結婚紹介所に入会するはめになったのだろう。
 やっぱり、妹たちが結婚して、しきりに見合いを勧めてきていた田舎の両親が弟子を養子にして跡を取らせることにしたと連絡してきたからだろうか。
 粘土板の数字を見ながら、もう一度ため息をつく。
 



 紹介所から連絡があったのはほどなくのことだった。
 紹介所に向かって歩きながら、ハディは髪をなでつけた。
 相手のプロフィールに目を通す。
 プライバシーの保護のため、名前は書かれていないが、年収や家族構成や、希望する相手のタイプが記入されている。
(物事に動じない、腕の立つ頭の良い女性って・・・変わった趣味よね)
 変わった趣味だからこそ相手が見つからず、こうして適齢期の過ぎたハディに回ってきたのかも知れない。
(ものすごい変人だったらどうしよう・・断ればいいんだけど)
 高い会費を払ったのだから、来る話は全員会ってみることにしていた。
 今回が、最初の人物で、どうも最初から変わった人を引き当てたようだった。
(だいたい、この年収でまだ結婚していないのが・・ヘン)
 気が重くなりながら、ハディは結婚紹介所の入り口をくぐった。
「まあ、お嬢様お待ちしておりました」
 所員の女性が近寄ってくる。
「殿方はもうお待ちですのよ」
 奥の部屋を指す。
「お飲物をお持ちしますわ」
 ワインを注文すると、ハディは見合い相手が待ち受ける扉に向かった。
 飲まなければやってられない気分だった。
 引き返すには、会費が高すぎる。
「失礼します、遅くなりまして」
 頭を下げる。
 返事はなかった。それがますます気分を落ち込ませて、ハディはのろのろ顔をあげた。
 呆気にとられたように口を開けて座っているのは・・。
「イル・バーニさま!?」
 めったに見られないほうけたイルは、名前を呼ばれて正気に返ったようだった。
「ハディではないか・・・」
 なんという偶然、運命の悪戯。
(イル・バーニさまが結婚相手を捜していたなんて・・)
「あーハディ・・」
 イルが咳払いをする。けれど、ハディの頭の中は疑問でいっぱいだった。
「「いくら払いました?」」
 最低な言葉が、はもった。


                     おわる  
    

      

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