ちち。〜〜超問題大作
まえちち
「おのれ、無礼者!!成敗してくれる、そこになおれ!!」
私は叫ぶと、すらりと鞘から剣を抜き出した。
男は床に座り込んでがたがたと震えていた。
「陛下、おやめ下さい!」
三姉妹達が声を上げる。
しかし、いかに心の広い私にでも、許せないことがある。
「カイル!!」
ユーリの声がした。かわいそうに、怖かっただろう。
「ユーリ、私が来たからにはもう大丈夫だ!!」
「なに言ってるの、カイル!?」
むき出しの胸元を覆いながらユーリが震える声で問いかける。
「オリエント広しと言えども、おまえの胸を揉めるのはこの私だけだということを、思い知らせてやろう」
剣を大上段に構える。
私が室内に踏み込んだときに、かわいいユーリの胸を(この場合、『かわいい』はユーリに掛かる。胸ではない、念のため)揉みしだこうとしていた不遜な初老の男は、のどの奥でくぐもった悲鳴を上げて後ずさった。
「覚悟!!」
「や〜め〜て〜っ!!」
いきなり、目の中で火花が散った。頬の焼け付くこの感覚。
「ユーリ・・?」
剣を振りかざしたまま、呆然とする。
ユーリが、私の前で仁王立ちになっている。
頬が熱い。
ぶたれたのか?
「・・・なんのつもりなのよっ!?」
スナップを効かせた平手打ちをくり出したために赤くなった手のひらをぶんぶん振りながらユーリは言った。
「お医者さまに、剣をむけるなんてっ!」
「お医者さま・・?」
男を見やる。男は、ぐええと鳴いた。
「医者が・・・おまえに不埒なことを?」
医者という身分を悪用して、ユーリの胸を揉むとは、卑怯な男だ。
「何が不埒なの!?カイルおかしいんじゃないの!?乳房マッサージを習ってただけなのよっ!!」
乳房・・・マッサージ?
「そうですわ陛下。医師は、母乳の出を良くするためのマッサージをユーリさまに教えておられましたのよ」
ハディの声が、こころもち非難めいて聞こえる。
「・・・そうなのか?」
ユーリがきっぱりとうなずいた。目がつり上がっているのは・・怒っているのだろうか?
「・・・そうか、医師よ、すまなかったな」
剣を納めると、謝罪する。賢帝たるもの、おのが過ちを素直に認めるのは当然だ。
医師は、両脇を双子に抱えられながら、まだ白目をむいていた。
「どうなのだ、ユーリの・・・乳の具合は・・」
「・・・ぐえ・・・ぐう・・」
医師は・・言葉が不自由なんだろうか?双子にぶら下げられるようにして、口をぱくぱくさせる。
「・・・なんで、カイル来たのよ?」
恨めしげに、ユーリが言う。
「おまえの様子を見るために決まっているじゃないか」
なにしろ、ユーリは妊娠中なのだ。常に体調に気を使ってやらないと、何が起こるかわからない。
「昼ご飯の時に会ったじゃない」
「ユーリ、考えてごらん」
私は、まだ唇をとがらせているユーリの肩に手を置き、やさしく諭す。
「おまえは普通の身体じゃないんだ・・なにかあってからでは遅いんだよ」
「それで、お医者さまを脅しつけるわけ?」
「・・・今回は、私の早とちりだ」
考えて見ろ、こうるさいイル・バーニの目を盗んで後宮に忍んで来れば、男が愛妃の胸を触っていた。私でなくても、大抵の皇帝ならキレるだろう。
「それにしても、おまえに何もなくて良かった・・」
そっと抱き寄せる。
「・・・これからは、乳房マッサージとかいうものは・・・私がしてやろう」
かってこんなに妻につくす皇帝が存在しただろうか?
それなのに。
「いらないわよっ!!」
もう一度平手が飛んできたのはなぜだ?
なかちち
デイルには・・眉毛がない。
そのうち生えてくるとは思うが、生後3日目の現時点では、顔中に産毛を生やしたまま、眉毛らしきものは識別出来ない状態だ。
それでも、かわいいことに変わりはないが。
「うむ・・・やはり、おまえに似ている」
ユーリの胸に吸いついている我が子を見ながら、感嘆する。
「そうかな?目鼻立ちはカイル似だよ」
手のひらに乗るくらいの赤ん坊を、両の手で抱きかかえながら、ユーリが微笑む。
笑顔は、ふわりと音がしそうなほどに華やかにユーリをいろどる。
無心に口元を動かしているデイルを見守る姿は、神々しい。
「私似か?・・・かわいいな・・」
「うん・・・かわいいね」
デイルが、大きく口を開けた。あくびをしているようだ。ユーリの乳首が離れたことに不安を覚えたのか、顔が紅潮する。
「ほら、ここでちゅよ」
舌足らずに言って、ユーリが胸を寄せると、慌ててむしゃぶりつく。
「こいつ、必死だな」
「赤ちゃんだもん」
全身で乳を飲んでいる赤ん坊の頬に触れようとして、気がつく。
「濡れているぞ?」
見れば、赤ん坊に占領されていない方の片胸を覆う衣装に、染みが広がっている。
「ああ、これね。どうも、一方からおっぱいが出ると、もう一方からも少し出てくるみたいなの」
「そうなのか?」
言いながら、そちらの胸も露わにする。
細い身体に不釣り合いなぐらいに、胸が盛り上がり、薄い皮膚を通して血管が透けて見える。
「・・・痛そうだな」
乳首の先から、ぽたりぽたりと伝う滴を見ながら、感心する。
「痛いよ・・デイルが飲んでくれるまでは」
張りつめた乳房をそっと包み込む。
「しばらくのあいだは・・・デイル専用だな」
指先に力がこもったのには、他意はなかった。
「・・・!!」
ぴゅーっと、勢い良く幾筋もの母乳が飛び出て私の顔を濡らした。
「ちょ・・ちょっとカイル!!やめてよ、デイルが飲むんだから!!」
私は手を離しながら、感心していた。
「・・・押すと・・・出てくるのか・・」
デイルがうなった。自分の取り分に手を出されて怒っているのだろうか?
「ああデイル、分かっているよ。これは今のところおまえのものだ。しかし、あくまでも、今だけだぞ」
それから、顔についているユーリの母乳を指先で拭うと、口に含んだ。
この味は・・。
「カイル?」
「・・・まずい・・」
思わず、正直な感想が出てしまった。
ユーリは、一瞬目を見開き、それからむくれた。
「そう?じゃ、カイルには触らせてあげない!!」
・・・・あんまりだ。
あとちち
「なんかね、小さくなった」
しょんぼりとユーリは言う。確かに、開いた胸元は・・多少控えめだ。
「小さくないよ・・元通りだ」
慣れ親しんだ柔らかさに、笑みがこぼれる。身体の線は崩れていないし、象牙色の肌は透き通っている。
久しぶりに、堪能させてもらおう。
「でもね・・あたし・・巨乳だったじゃない?」
授乳中のサイズの事を言っているのだろうか?確かに、豊かだったが・・・巨乳というわけでは・・。
「デイルが飲まなくなったら、あっという間に縮んじゃうんだもん」
「別に気にすることではないだろう?おまえは充分綺麗だよ」
あの頃は、触るとユーリが嫌がるので、かなり淋しいものがあった。
「カイル・・胸の大きい方が好きって言ったじゃない」
またこれだ。大昔に私がふざけて言った言葉をまだ気にしている。
「私が好きなのは、おまえだよ」
「だけど・・」
大きくても触れない胸よりは、小ぶりだろうが楽しめる胸の方がいい。
「もう、お黙り」
「・・あっ・・・」
私は、はやる気持ちをおさえながら、ゆっくりとユーリに触れていく。
今日のデイルは上機嫌で、スプーンで皿の中味を引っかき回していた。もう、ユーリの胸を独り占めしたがる事もないだろう。
医者だって、当分ユーリに触れることもないだろうし。(いつぞやの医者は引退した。私は腕のいい女医を捜し出さなくてはならなかった)
そう思うと、心が浮き立ってくる。
なんというのかな?
ちちを思うと千々に乱れ・・ってやつか?いや、別に乱れてないな・・。
ちちとして進まず・・。とんでもない、進んでいるとも!!
ちちを訪ねて三千里。う〜む、いまひとつ。
「・・・カイル・・・ヘンなこと・・考えてない?」
息を乱しながら、ユーリが訊いてくる。なんだろう、このカンのよさは?
そこは、やはり・・夫婦だし・・・なんたって親になったんだしな。
・・・そうかっ!!
「ちちがないのに・・父親・・」
「なに言ってんのよっ・・」
ユーリの指が、私のほっぺたをびょ〜ん長くと引き延ばした。
おわり(どうしようもない)
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