焼き魚?

                        byマリリンさん

だんだん池の水が減ってきている。おれは、水面から顔をだし周りをみまわした。
暑い、顔がひび割れる。あわてて水の中に潜り込む。
おれは、王宮中庭の池の主だ。皇妃の寵愛を得ているということで魚であっても特別待遇のはずだ。なのに水が減ってきているとは・・・・

皇帝陛下の姿が見える。
水面からもう一度顔を出す。しっかり眼があった。
皇帝はにやりと笑いおれにこう言った。
「刺身か焼き魚にしようか?それとも水がなくなって息ができなくなって死ぬのを待つか?」
「ひえぇぇ どれもいやだあ」
水をかけてやろうと思ったが、おれの身体がかろうじてつかっているぐらいの水しかない今、それは自殺行為だ。思いとどまることにする。皇帝は機嫌良く(?)引き上げていった。

皇太子とピア皇子がやってきた。小さな壺を持っている。
なんだ? 餌をくれるのか?
壺が傾けられわずかな水が注がれる。ん?
「皇子様方」ハディの声がする。「何をなさっておいでですか?」
ハディの眼が壺をみつける。はっとした二人の皇子は必死になって声をはりあげる。
「ぼ、僕たちどこからも、お水とってきてないよ。これは、僕たちが飲まないで貯めておいたお水だよ」
「・・・・・・・・・・」言葉がでない。しかし、このままでは・・・・・
「皇子様方、ちゃんとお水は飲みましょうね。皇子様方に何かあったら大変ですから・・・」
「だ、だって・・・・このままだとお魚死んじゃう」
ピア皇子が泣き声で訴える。

おれは思った。
刺身にでも、焼き魚にでもなれるかもしれない。


大粒の雨が降り注ぐ。中庭の池にもだいぶ水が貯まった。
これで、やっと自由に泳ぎ回れるぞ。久しぶりのこの感触、やっぱりいいなあ
気がつけば2対の瞳がおれを見つめている。水面に浮かび上がり合図を送る。
二人の歓声があがる。
「よかったあ、元気 でたんだねえ」
「あのね、あのね、この雨は父様と母様が降らせたんだって」

喜ぶ子供たちの後ろに皇帝夫妻がそっと佇んでいる。
「飲む水を減らしてでも何とかしたかったんだもの。食べたりしたら一生恨まれるわよ。」
「そんな、危ないまねはしないさ。」くすっと皇帝が笑う。
「脅しをかけたところをしっかり見られていたようだな。」

「あっ 父様 母様 雨を降らせてくれてありがとう」
びしょぬれのまま飛びついてくる子供たち
久しぶりにくつろいでいる皇帝一家の姿が中庭にあった。

                        おわり


       

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