危険な二人
丘の上に座る二人の姿。かたやエジプトの名将軍、かたやヒッタイトの近衛長官。
そんな二人が、なぜ並んでいるのかは追求しないことにして、今片方の近衛長官、ユーリ・イシュタルは不穏なことを考えていた。
(ふふふ、いまここであたしがラムセスを呼んだら、振り返るわよね?そうしたら、指がほっぺに当たって、ヘンな顔のラムセスが見られる〜)
左後方より、甘い声で呼びかける。
「ラムセス〜」
「なんだ?」
言った、エジプトの将軍ウセル・ラムセスは振り返った。左にではなく、右に。首がぐるりと回った。その角度270°。
「きゃああああ」
人間ワザじゃない。
当然ユーリは飛び退いた。
「な、な、なんでそんなに首が回るのよっ!?」
「おどろいたか!」
妙な具合に首をねじったまま、ラムセスは呵々と笑った。
「こんなこともあろうかと、わざわざインドより呼び寄せた師匠に習ったのさ」
「・・・師匠って?」
立ち上がったラムセスの腰のあたりに、白い毛むくじゃらな生き物が張りついていた。 それを剥がして掲げると胸を張る。
「ナマケモノだ!」
ナマケモノの首は270°回る。さすがエジプト一の名将軍、着眼点が違う。
だけど。ユーリは考える。
(ナマケモノの生息地はインドじゃないわ!!)
丘の上には、今日も風が吹き抜けてゆく。
あまり、追求しないで下さい。
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