「めぐり逢えたら」第一話
by静御前さん
BC12世紀 ハットウサ
かつて
イシュタルと呼ばれ、女性初の近衛長官を務め、皇帝を支え続けヒッタイトに華のごとき栄光をもたらしたタワナアンナ・ユーリ・イシュタル。
彼女は今まさに、最後のときを迎えようとしていた。
「カイル・・あたし多分もうだめだと思うの・・・」
「何を馬鹿なこと言ってるんだ。そんなこと言わないでくれ。」
わたしはすっかりやせ細ったユーリの身体を抱きしめた。ただでさえ華奢な身体がいっそうはかなげになっている。
ユーリの身体に異変が起こったのは、ほんの数日前のことだった。
あの日、いつものように元老院議会に出ていたユーリは突然胸を抑えてたおれた。
突然のことだった。
すぐに優秀な医師が集められたがどの者も皆、手遅れだと言った。
ユーリ、おまえが望むことは何でも叶えてやれる自信がわたしにはあった。
だが、なんて様だろう。
わたしは無力だったのだ。
こんなに苦しんでいるおまえを助けてやれることも出来ない。
わたしは目に熱いモノを感じた。
しばらくして、それが数十年ぶりの涙だとわかった。
「カイル、生まれ変わりって信じる?・・・」
「生まれ変わり・・・・?」
「そう・・・・・あたし、必ず生まれ変わるから・・」
「・・・・・・・」
「だから、あたしのこと見つけて・・・どの世界に・・いても・・・・」
「ユーリ・・・?」
「愛・・してる・・・・」
「ユーリ!?」
ユーリ・イシュタル逝去
享年38歳
その翌年、ヒッタイト最大の繁栄を築きあげたムルシリ2世も彼女の後を追うようにして亡くなった。
そして数千年もの長い年月の間にヒッタイトは歴史の渦にその姿を消した。
かつてかの地にどのような壮大なドラマがあったのか知る人はいない。
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